母子分離不安とは、子どもが母親（または主な養育者）と離れる際に強い不安や恐怖を感じる状態を指します。幼児期に多く見られるものの、成長しても続く場合があります。特に、保育園や幼稚園への入園、親の仕事復帰など、新しい環境への適応が求められる場面で顕著になることが多いです。
原因は、子どもの気質や家庭環境、親子の関係性など、さまざまな要因が絡み合っています。幼少期の子どもは、安心できる存在（多くの場合、母親）との関係を基盤に成長します。この愛着が強いほど、離れることに不安を感じやすくなることがあります。特に、普段から母親と密接な関係を築いている子どもほど、離れた際に不安を強く感じやすいです。
生活環境の変化が原因の場合も。引っ越しや親の仕事復帰、保育園・幼稚園への入園など、生活環境が大きく変わっていく場面で、子どもは安心できる環境が失われたと感じ、不安を抱きやすくなります。
親のストレスが母子分離不安を引き起こすケースも考えられます。親が過度に心配しすぎたり、不安な表情を見せたりすると、子どもはそれを敏感に察知し、「親と離れることは危険なのかもしれない」と感じるでしょう
過去に母親と離れた際に強い不安を感じた経験があると、次回以降も「また同じように不安になる」と考えてしまうことがあります。母子分離不安は自然な成長過程の一部ですが、対処法を知ることで親子ともに負担を軽減できます。
いきなり長時間離れるのではなく、まずは短時間から始めて、少しずつ慣れさせていくのが効果的です。例えば、別の部屋にいる時間を少しずつ増やしたり、信頼できる家族や知人に短時間預けたりすることで、徐々に離れることに慣れさせましょう。
「すぐに迎えに来るよ」「大丈夫だよ」と声をかけ、笑顔で送り出すことが大切です。不安そうな表情を見せると、子どもも「やっぱり不安なことなのかも」と感じてしまいます。別れ際には、短く明るく「行ってきます！」と言う習慣を作ると、スムーズに離れられることが増えます。
お気に入りのぬいぐるみやハンカチなど、安心できるアイテムを持たせるのも有効です。特に母親の香りがついたものは、心理的に安心感を与えると言われています。
「ママと離れるのが寂しいんだね」「不安になる気持ち、わかるよ」と、子どもの気持ちを否定せずに受け止めてあげることが大切です。無理に「泣かないで！」と言うのではなく、「でもちゃんと迎えに来るからね」と安心感を伝えましょう。
子どもが不安になった時、親も「大丈夫かな？」と心配になりがちですが、落ち着いた姿を見せる何よりの安心材料です。親自身がリラックスできる方法を見つけることも、子どもへの良い影響につながります。
本コラムでは、母子分離不安の原因と対処法を解説しました。原因には、愛着形成の影響、環境の変化、親の不安などがあり、成長過程で多くの子どもが経験します。子どもの気持ちを受け止め、適切な対応をすることで、親子ともに無理なく母子分離不安を乗り越えられるでしょう。
